ブラジルには「ユーカリ」の林があります。ユーカリの原産国は、ブラジルではありません。コアラでおなじみのオーストラリアです。ブラジルは、世界最大のユーカリ植林国と言われています。
ユーカリは成長が早く、紙パルプの原料として重宝されています。広大なユーカリ植林地帯の周辺に養蜂家が巣箱を配置すると、蜂は「蜜」を集めてきます。なかなか、評判の良い蜜だそうです。そんなことで、ブラジルのハチミツ(豊富にとれる)は、ユーカリという認識があったようです。
ブラジル産のプロポリスが日本人の目に触れた最初の頃、ハチミツと同じように、「ユーカリ」林で採れるプロポリスが一番良いのだろう、と単純に推測した人がいて、良質なプロポリスの基源植物は「ユーカリ」、それがグリーンプロポリスの最上級、といった話が広まっていったようです。
「バッカリス」がグリーンプロポリスの基源植物であると判明
元々、ユーカリはブラジルに自生していなかった植物です。ユーカリは成長が早く、荒れ地を緑化することも可能で、雇用にも貢献するという見方がありました。その一方で、その強い生命力ゆえ、過度の植林は「生態系」を脅かしかねない、と懸念する声もありました。
はたして本当に、最良のプロポリスは、「ユーカリ」を基源植物としているのか。
その分析に初めて挑んだのが、当時の富山医科薬科大学のプロポリス研究スタッフ、バンスコッタ博士でした。彼が膨大な化学式から同じ特性を持つ、植物を特定したのです。それがバッカリス(学名:バッカリス・ドラクンクリフォリア)でした。
当時の事を振り返り、バンスコッタ博士は、こう話します。
「私は、バッカリスという植物をそれまで一度も目にしたことはなく、はたしてプロポリスが収穫される地域の周辺でその植物があるのか無いのかも知りませんでした。しかし、化学分析からこの植物に間違いない、と判断しました。この分析には自信がありました」
その研究成果は2000年、バンクーバーで行われた国際養蜂会議「アピモンディア」で発表され、大きな話題となりました。そして、バッカリスが基源植物だと初めて知ったミツバチ研究家、プロポリスを扱う商社の間で、大きな衝撃が走りました。
というのも、彼らは「プロポリスの最良品はユーカリを基源とするもので、私達はこれしか扱ってない」と自慢していたからです。基源植物の特定だけでなく、バンスコッタ博士により、プロポリスの有用性も次々に示唆されました。それは、プロポリスの化学的解明の、まさにその第一歩といえるものでした。
バッカリスとアレクリンは同じ物?
ところで、バッカリスについて抱いていた疑問を、ある時、ブラジルのサプライヤーにたずねたことがあります。
「私は、何度もブラジルに行っていますが、私はその道中なり、養蜂園の周辺で、バッカリスを観たことがあるのでしょうか?キク科の植物って?そんなのありましたか?どこにあるんでしょう?」
すると、ブラジル人のサプライヤーはこう答えました。
「あ~、アレクリンね」
「えっ?バッカリスって、アレクリンの事だったんですか?」
このサプライヤーは、サンパウロ大学やビソーザ大学と協力して、プロポリスに含まれる花粉を顕微鏡で見つけるという、極めてシンプルな方法で、基源植物の推測をしていました。かねてから、アレクリンの花粉などが多く確認できること、アレクリンに近づく蜂の頻度が高いことなどを認識していたようです。それが化学的な解明で明らかになり、自分の推測と一致したことに満足げでした。
「アレクリンはローズマリーだと聞いていましたが」私が、単純な疑問を投げかけると、
「アレクリンと言うのは、ポルトガルでの呼び名です。ポルトガル人がブラジルに移民して来た時、本国でアレクリンと呼ばれる植物に良く似た植物を発見し、バッカリスをアレクリンと呼ぶようになったのです」と答えました。
「ポルトガルでは、先祖の時代は、アレクリンの小枝や葉の部分を箒のように束ね、それで部屋の掃除をしたものです。抗菌作用もあると考えられていました」
バッカリスがポルトガルでアレクリンと呼ばれる植物に似ていたことから、どうやら「アレクリン」と地元民が言うようになったようです。アレクリンは英訳すると「ローズマリー」ですが、バッカリスとローズマリーは同一植物ではありません。
バッカリスは、キク科の植物ですが、いわゆる日本に生息する菊類とは違います。肥沃な土地ではなく、セハードと呼ばれる痩せた土地に生息しています。痩せた土地で必死に成長しようとしたことで、自身の活力を高め、生命力を生み出したのかもしれません。バッカリスの新芽は、当社のプロポリス原料と同じニオイがします。ミドリのプロポリスの匂いです。
ブラジルのサプライヤーは、地元の養蜂家達とも連携をとり、情報を開示し、より良い蜂産品の収穫を推進しています。
原料の品質向上の背景にある、こうした原料供給側の努力も忘れてはなりません。